そのうち――あたし、なんだか変ですわ。という台詞の声の下から、絶頂を知らせる悲鳴が響きます。用意してあった半月刀を装備して……もちろん偽物の、ほとんど玩具のような代物です……ドアを開け、室内へ踏み込みました。ベッドの上、アバヤを乱したお客さまの開いた脚のあいだで、股間を露出していた使用人が慌てて足首にまるまっているスラックスと下着をあげてから、私を押しのけて部屋を飛び出します。

 私は眉間に皺を寄せて怒りの表情を作るよう努め、お客さまに近づきました。お客さまの陰毛は破瓜を演出するための血糊と、おびただしい愛液で濡れそぼっております。私は女陰に乱暴に触ると、ねばつく手をお客さまのヴェールに覆われた顔の前にかざし――嫁入り前に純潔を失い、そのうえ快楽を感じてしまうとは恥知らずな娘よ。と、台詞を吐きました。お客さまは体を起こし、私の服の裾を掴んで――違うのお兄さま! 暴漢が無理やり……と、すがってきます。私はお客さまの兄という設定でした。

 お客さまの官能を冷まさないよう、頬を手加減なしで張りました。そのまま語調を荒らげて――言い訳をするな! 純潔を守れなかったほうが悪い! いや、お前が誘惑したんだろう? こんなに濡らして! と、怒り狂いながらお客さまを何度も叩き、ベッドから引きずりおろして、体中を蹴りました。――許してっ! 許してっ! と、泣きわめくお客さまに、私は厳格なイスラームの教えに則って――お前は家族の恥だ。俺は長男として、家族の名誉を守るためにお前を殺さなくてはいけない! と、容赦なく死刑宣告をしました。

 半月刀を抜き、すすり泣きつつ首を差し出すお客さまのうなじに刀をあてがいます。――お前のような恥さらしは赤子のうちに殺してしまうべきだった。と、悔やみ、刀を振りあげ、首筋を打ちました。お客さまはバタッと床に伏し、二、三回痙攣して見せたあと、そのまま沈黙しました。性的なことに触れる機会のなかった、禁欲なイスラームの少女が結婚まで死守しなければならない処女を強姦で奪われ、あろうことか初めての性交に興奮を覚えてしまい、肉親から名誉の殺人として私刑に処される……という筋書きの少女の死体にお客さまがなりきって、快楽の極みを漂っているのを邪魔しないよう静かに部屋を退出します。これで遊戯はおわりです。

 このお客さまの趣味は共感するところが多く、遊戯がおわってからよく手淫しました。

 ……最後に、奴隷たちから神様と称されている、屈強そうな体と顔つきをした男性のお客さまをご紹介したいと思います。噂だとこの方はたまにエデンにいらっしゃっては、とくにこだわりのない様子で奴隷を選び、それからはほぼ毎日選んだ奴隷のために一定期間エデンへ通うらしく、ある日ついに私をご指名してくださいました。お客さまは真顔で――肛門で達したことはあるかい? と、たずね、私は正直に――薄ら快感はありますが、後ろだけだと放出するほどではありません。と、答えました。すると、お客さまは――真の肛門快楽は放出などしないよ。俺が教えてあげよう、と。これでお客さまのお相手をすることが確定したのです。

 で、なぜに神様と呼ばれているのかというと……。まず、お客さまは私の部屋に来るとすぐに性行為はせず、使用人にお菓子を運ばせて、歓談を楽しもうと誘ってくれます。失礼は承知の上で、私の目にはお客さまはちょっと怖面に映っていたのですが、お話ししてみると非常に気さくな方でした。十分リラックスしてからベッドに仰向けに寝て、お客さまは私の脚のあいだに座ります。

 ――なにかスケベな想像でもしてな、と、お客さまは私のショーツを脱がせ、後ろをローションで濡らしてから、きちんと爪を切っている指で優しく前立腺を叩いてくださいます。もどかしく、なんだか切なくなってくるような独特の気持ちよさと、かすかな尿意を感じました。さらにもう片手で、羽毛が触れていると錯覚しそうな絶妙な加減で、太腿や乳首を撫でてくれます。お客さまの愛撫の技術は講習のときの戸渡さん以上です。

 陰茎に触って欲しくなりましたが、お客さまはそこにいっさい手をつけません。だいぶ長いこと中を愛してもらいましたが、とくに進展しませんでした。お客さまは――大丈夫。君ならそう時間はかからないよ、と指を抜き、ご自身は陰茎を露出することなく部屋を出ていきます。それから毎日、私の後ろに指や色々な道具を挿入なさいました。少しずつですが後ろを弄られていると、なんの刺激も受けていないはずの陰茎が痺れているように感じたり、肌を撫でられただけでぞわりとした感覚が下半身に広がったりするようになりました。

 そして、肛門快楽に目覚めた日。もどかしい快感が、その日はジワジワと高まっていくのがわかりました。尻の中が脈打っているように感じられ、心臓が異常に振動しはじめます。そのまま快感のある一線を越えた瞬間、私は無意識に絶叫をあげていました。下半身が電撃を流されたみたいに痙攣し、陰茎は半立ちでカウパーしか漏らしていないのに十分すぎるほどの肉体的快楽があります。むしろ射精しないぶん快楽は萎むことがなく、お客さまの指の動きがとまるまで、私はスケベな想像に使っていた女体化した自分と一体化している気分で喘ぎ、シーツを乱しながら何回も達しました。

 しばらくしてから、お客さまは息も切れ切れの私に――これからは、手淫も性交も百倍楽しくなる。と、大変満足気に微笑みました。手淫するとき後ろに使う道具は指やエネマグラのほかに、綿棒やマドラーが手軽にドライオーガズムを得られるからおすすめだとアドバイスを残し、お客さまは私のもとを去っていきます。奴隷なのに、奉仕を受けてしまったような気分でした。ふと――快楽を感じられる箇所は、広げたほうが人生楽しいですよ。という、戸渡さんの言葉を思い出しました。

 奴隷の女の子が、神様のおかげで膣のよさがわかったと言ってましたっけ。このように、お客さまは未開花の体を開花させてあげるのが趣味のようで、まさに奴隷からしたら神様のような素晴らしい方なのでした。

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