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 お客さま方と別れ、エデンに帰ってから、遊戯で疲れているはずですが伊織は私からのご褒美を求めてきます。ベッドの上でそれを与えると彼女はよがり、私にしがみつきながら――ああ、次こそは……と、呻くように言いました。

 彼女は二、三回達している様子がありましたが、私は放出できませんでした。以後、兄妹でデートのお誘いを受けて、外出中隙らしいものができても適当に理由をつけて無謀だと伝え、彼女をとめてきました。

 ところで、時が経つにつれて強くなっていく彼女の性欲に、私は悩まされはじめていました。私が過酷な遊戯をしたあとで疲れていても、体調が優れていなくても、お客さまにしこたま飲まされて二日酔いという状態でも、彼女は求めてきます。応じないと、機嫌がすごく悪くなります。獣のような頻度と激しさで交接すると、派手に、上手になった嬌声をあげ、情熱的な求愛と外界に対する希望の言葉を吐きつづける彼女。……このころから伊織と二人で過ごす時間は癒やしでもなんでもなく、むしろ苦痛と化しつつありました。

 彼女がお客さまに弄ばれて濡らすことがあったのは、このあと、私に慰めてもらえるという期待からだと悟ります。……いえ、なにも、苦痛を感じるようになったのは別に楽しくもなんともない普通の性交を強要されつづけたからだけではありません。彼女が私以外の男に抱かれたりすることに覚えていた罪悪感。それを、私も感じるように強いてきました。

 私が奴隷の女の子や、お客さまのご婦人や、笹沼夫人と仲良くしすぎているのを見つけると、彼女はがみがみ怒ります。表向きだけだよとなだめつつ、内心あまりの面倒臭さに辟易していました。こういう束縛、エデンでは愚行極まりありません。

 だんだん、エデンで清純や純情は受けない理由がわかってきました。やはり、成熟する前にエデンに連れてこられた私の外界の常識に対する認識は甘かったようです。楽園で快楽を制限されてしまうなんて、耐えがたくいらいらします。もしも伊織が堕落しても、複雑な気持ちにはなるでしょうが私は邪魔しません。変わった趣味は付き合えそうなものなら付き合います。エデンを訪れる快楽主義であるカップルのお客さま方の姿で、その辺は学習していました。

 奥さまとその夫君の愛人が仲良し。そんな光景はエデンではざらです。嫉妬など感じないか、感じても嫉妬という感情を楽しめてしまえるほど心に余裕のある方々です。笹沼夫人も夫君に暴君のような振る舞いをしているように見えますが、束縛はしていません。自分もそうしているのだから平等に、夫君には愛人をいくらでも作っていいと言ってあるそうです。それでも夫人の夫君いわく、愛人なんて一人も作っていないそうですが。そのうえ、夫君は夫人の暴君の振る舞いで、夫人は夫君から与えられている自由で、それぞれの趣味を充足させています。

 お互いの欲を満たしあい、束縛しない。そんなおおらかなカップルの姿に憧れてしまいました。……いまだに外界外界と騒ぐ伊織に、私は自分の趣味を告白できそうにありません。私を精神的にガチガチに縛り、抱いて抱いてと下品にねだりつつもどこか苦しそうな彼女を見ていると、いつの日かお客さまのご婦人に言われた――女は淫奔であったほうが幸せになれるのよ、という言葉を思い出します。その通りかも知れない、と思ってしまいました。

 最初のうち、恋は快楽のいいスパイスになっていましたが、今となってはただの弊害です。こんなに生臭いものだったのか。これなら出会ったばかりのころ、デートしていたプラトニックなときのほうが楽しかったです。今や伊織はお客さまなどから責めを受けても技巧じみ、鞭やペニスバンドは相変わらず私に対しては不器用です。さして快楽も得られません。数年が経つうちに、もう彼女への思いは冷めていっている自分がいました。

 ……伊織の清純さに惹かれ、恋に落ちたはずなのに。後々それが嫌になってしまうとは、皮肉なものですね。やはり私と彼女は違いすぎた。ところで、私はなぜここまで外界を拒絶するのかについてですが……伊織への恋心がまだ熱かったころ、一瞬だけですがまじめに考えてみたことがあります。エデンを出るということを。なにも脱走などと乱暴かつ危険な方法を使わなくても、私と伊織がもっと年を取ってから、年季明けということで私たちを外界で結婚させてくれないか旦那さまに相談してみるとか。

 でも、お客さまに身請けされるなどして外界へいった奴隷が、泣いてエデンに戻ってくることが多いのを見てしまうと、ね。旦那さまはお優しいから、傷心の奴隷を受け入れてくださいます。ずっとエデンで育ってきた奴隷に、外界は勝手が違いすぎたのですよ。お客さまも愛玩してきた奴隷がもう奴隷ではなくなっていって、変わっていく関係性にどう純粋な言葉を並べつつも耐えられなくなってしまったのでしょう。

 お客さまも奴隷も人間ですから気持ちが一線を越えて互いに愛し合う、そんな不幸な状態になってしまうことはたまにあります。お客さま全員が前述したカップルのお客さま方のように超越しているわけではありませんからね。外界で奴隷と幸せになりたかったら、奴隷を監禁してしまうかお互い淫奔を極めるしかありません。……私、外界はつまらないというより、むしろ怖いです。微妙に知っているからこそ。

 話を戻しましょう。さらに時が経ち、もう去年のことですね。笹沼夫人が脳溢血で突然お亡くなりになったのは。まだ、四十五歳でした。夫人の死からしばらくして、夫君がお一人でエデンにいらっしゃいました。私との遊戯をお望みになりましたので、夫君を縛って、鞭打って、ペニスバンドで犯して差し上げました。夫君は涙を滲ませながら嬌声をあげ、乱れ、多量の精水を放出し、遊戯をおえたあと力なく――京子は、涸れていた私を潤してくれたのだよ。もう、あれほどの女主人(ドミナ)に巡り合うことはないだろう。いなくなってしまうなんて、こんな責めはまったく嬉しくないぞ。と、呟くように言いました。以来、夫君はエデンへお越しになられません。ご子息も、ばったりと。

 夫人のことは大切なお客さまであるのと同時にお友だちのように感じていましたから、もちろん私も悲しいです。で、悲しんでいるところ、伊織は私に夫人の悪口を聞かせます。死んでよかったという内容でした。彼女の夫人に対する悪口は前々から度々聞かされていましたがこのときは黙り込みつつ、彼女を怒鳴って引っ叩きそうになるのを必死に堪えていました。もう、破綻は近づいています。

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