[人工楽園にて]

 目を覚ますと、カーテンからかすかに明かりが漏れている。旦那さまの部屋には窓があるから便利だ。まだ寝息を立てている旦那さまを起こさないよう気をつけながら、昨夜のコルセットを手に取り部屋を出た。

 並ぶドアの一枚から、使用人の一人が廊下に現れ鉢合わせる。使用人は唐突に陰茎を出して、吸茎を求めてきた。顔を近づけると、陰茎は先程まで奴隷の体内にあったのかほんのり大便臭い。含み、技を駆使すれば使用人はあっさり精水を放った。長引かなかったことに安堵する。

 トイレに寄り、備えつけの浣腸器で朝の洗浄を済ませ、一階左ウイングの大浴場へ向かった。脱衣場の床には衣類を入れた籠が一つ。黄金色の布に黒い龍が刺繍されたオリエンタルなコルセットには見覚えがあった。横に自分のレザーのコルセットを置いて、曇ったガラスドアを開ける。噴水に近寄ると、ニンフの彫刻の優美な線を描いている脚にもたれかかっている女性がいた。白く、つややかな頭部ですぐに誰だか気づく。

「おはようございます、瑞樹さん」
「おはよう」

 彼女は目を細め、微笑を向けてくれた。体を適当に流し、ついでに口をすすいでから、噴水に入る。彫刻に背を預け、彼女の隣で乳白色の湯に身を浸からせた。そのまま黙ってあたたまる。先に噴水からあがって、洗い場でシャンプーを泡立てた。毛髪のない彼女は俺より早く浴場を出た。

 一通り洗いおわり、脱衣場に戻る。彼女はコルセットを巻いて、姿見の前で化粧をしていた。濃いピンクのチークを頬だけではなく、乳首にも塗っている。笹沼夫人とそう変わらない年齢に達しつつ、ニンフと負けず劣らずの見事な肉体をつい見遣りながら体を拭いた。彼女は床に座ると大きく脚を開き、暗紅色の裂け目にチークを塗り込む。

 立ちあがり、チークをそばの化粧台に置いてから彼女は言った。

「ね、影次くん。コルセット締めてもらってもいい?」

 うなずいて、姿見のほうに寄る。彼女の尻に垂れている紐を掴み、引いた。具合も聞かず腰をしぼり、時折背中の紐の交差した部分に指をかけてたるみを直す。フルクローズすると、腿まで伸びた紐を結わえた。

「ありがとう」

 彼女も俺のコルセットを締めてくれた。それから首筋に張りつく髪を乾かしているあいだに、彼女は前が開いたロングのオーバースカートと、ガータータイツのみを穿いて脱衣場を出ていく。ドライヤーを置いて、俺は彼女と同じように化粧をした。

 旦那さまの部屋へ戻る途中、通りかかる広間の前。ドアが開放されていて、使用人たちが食器を載せた盆を持ち忙しく出入りしていた。階段をのぼり、部屋に入る。ガウンを肩にかけた旦那さまが揺り椅子に座って、煙草を吹かしていた。

「……おはようございます」
「おはよう。今日は一緒に朝食をとろう」

 サイドテーブルの上の重そうな灰皿に煙草が押しつけられる。

「その前に吸茎を頼むよ」
「はい」

 旦那さまの足下に屈み、陰茎を丁重に扱う。ゆらゆら揺れるなか、肘かけにすがりつきながら仕事をする。しばらくして旦那さまは放出した。また少しして、旦那さまは放尿した。すべて飲み込む。

 すっきりした旦那さまは俺に煙草を一本くれた。吸っているあいだ、旦那さまは身支度を整えていた。スーツを着た旦那さまと一緒に一階へおりて、広間にいく。

 サテュロスをあいだに挟むように、二卓の長テーブルが設置されていた。サンドイッチとピクルス、コーヒーと紅茶。泊まりで楽しんだ客たちがお気に入りの奴隷をはべらせて絨毯に座ったり、寝そべったりして飲食していた。瑞樹の姿もあった。長いこと瑞樹を愛玩している気弱そうな面相をした客が瑞樹の頭を撫でて、瑞樹は笑いながら胡瓜のピクルスをかじっている。俺は旦那さまに注文を聞いてから、ローストビーフのサンドイッチとパプリカのピクルスを皿に盛り、紅茶を取った。

 しかし食事中、昨夜の催しで原稿に糞を漏らした客――木口さまがやってきて快楽の相手に俺を指名してきた。旦那さまに一言断り、木口さまとともに二階の自室へと向かう。

 今度は木口さまの注文を聞いた。

「すまないねえ、一生懸命書いた原稿にうんこをつけてしまって……ぜひ罰してもらいたい」

 そして犯して欲しい、と付言した。

「私は同性の方が相手で男役だと、どうしても立たないので道具を使ってもよろしいでしょうか」

 木口さまはやや残念そうにしつつもガウンを脱いで、部屋の半分を占めているベッドにあがった。俺はベッドの下の引き出しから鞭と疑似の陰茎がついたゴムのショートパンツを取り、パンツを穿く。ベッドに乗って、四つん這いになった木口さまのあざだらけで皺々の尻肉を打ちはじめる。木口さまは痛みに慣れすぎて麻痺しているのか、興奮させるためには相当力を込めて打ちつづけなければならず、汗が垂れた。

 血が出るまで叩くと、ようやく木口さまは満足した。茶色いかすのついた不潔極まりない穴をほぐし、挿入する。打ち込みながら陰茎を刺激すれば木口さまは放出した。が、ほかにも色々なことを求めてきて、俺はなかなか解放されなかった。薄い髪を引っぱったり、顔を丹念に踏んだりと、責めるほうはどうにもつまらない。おわってから広間におりたが、旦那さまはもう出かけていた。

 そのあと客たちの相手をずっとした。昨夜の催しに参加した客は鞭打ちばかり求めてくる。二、三人にかこまれて鞭打たれながら「なんて嫌らしい人生を送ってきたんだろうね、君は!」などと罵られたとき、俺は一回だけ放出した。

 そして夜になると自室で引き出しから今宵の分の自伝を取り、内容をざっと確認する。それから催しに備えて色を直した。黒のサテンに同色のレースをかぶせたコルセットを締めて、レースがそろいのショーツを穿く。ショーツは尻の部分にO形の穴が開いていた。部屋から出て、トイレで浣腸と化粧直しをすると夕食の席へと赴く。

 テーブルの上の薄い肉切れは、元は綺麗に花の形に整えられていたらしい。今は箸で乱された花弁を適当に皿に盛り、客を取り巻いているハーレムに加わる。しばらく戯れていたが、広間の時計が二十一時半を告げると全員静かに舞台のほうを見た。前座がはじまるのだ。

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