電子音ながらクラシックな曲調のBGMが流れ、おもむろに瑞樹が立ちあがる。コルセットを外し、スカート、タイツを脱いで彼女は舞台に向かった。次によれよれのシャツと薄汚れたジーンズを着て、口元が見えないくらいひげを伸ばしたホームレスと見紛いそうな姿の客――宮沢さまが舞台にのぼる。なにをするのかすぐにわかった。

 宮沢さまが、持っていた道具を広げる。パレットにチューブの絵の具をしぼり、混ぜて筆を直立不動の瑞樹に近づけた。脚から体の曲線に沿って、焦げ茶の線が走った。線は所々はねた。その線に今度は緑が重ねられ、骨盤の辺りに葉らしきものがついたところでなにを描いているのか悟る。薔薇の茎だ。はねたところは棘だろう。無毛の丘に押されている小さな薔薇の烙印の周りに、赤い大輪が咲いた。それから胸と、頭頂部にも開花する。

 瑞樹がゆっくりと踊るように廻って、宮沢さまの腕の素晴らしさを観客たちに示した。そのあいだに宮沢さまは画材をまとめて舞台から退く。入れかわりに、人形が着るようなデザインの黒いドレスをまとった少女が舞台にあがってきた。フリルで飾られた胸元は開いている。少女の烙印は鎖骨にあった。少女は瑞樹の足下にひざまずくと、薔薇の茎に舌をつけ、舐めあげていった。

 ペイントが溶けていく。少女は小さな手で瑞樹の腰を掴み、丘の周囲の薔薇を食す。エロチックな光景だ。しかし観客の一部は興味がわかないらしく、食事に集中していた。見世物が趣味に合わないだけか、瑞樹の姿のせいか。彼女の顔立ち自体はマネキンのように整っているのだが。

 瑞樹は膝をついて、少女に胸を舐めさせる。花弁にかこわれた乳首を噛まれると、瑞樹は短く鳴いて見せた。大きすぎず小さすぎない形よい乳房が唾液で延ばされた真紅の絵の具で、血を擦りつけたように汚れていく。そのまま少女の舌は茎をなぞり、瑞樹の首筋、顔を通った。そっと頬を両手で包み、頭の大輪を舐め廻す。

 ……やがてBGMはとまり、前座はおわった。瑞樹と少女が舞台からおりると、少女はハーレムの一つに、瑞樹はいつもの客のもとに戻った。客はなんだかおどおどした様子で瑞樹の頭をハンカチで拭いて、口づけた。

 二十三時。使用人たちが舞台に椅子を持ってきて、ディルドにオイルを塗る。俺は原稿を手に、舞台へあがった。増えたり、減ったりしている観客たちに頭をさげてから後ろを指でほぐし、椅子に座る。

「……もう家の児童たちと学校のクラスメイトは敬遠して、夜は先生たちにべったりなつき、私は退廃しました。子供たちに鞭の痕を見られてなにか聞かれても無視です。職員たちは物心のつかない幼児を風呂に入れる以外、肌を見せることはなかったと思います。

 私のお気に入りは女装して、尻を打たれることでした。先生が用意してくれたガータータイツを穿き、ワンピースを着て、下着はつけずに約週三回礼拝堂の長椅子に手をつきました。子供の私に夜更かしはつらい行為でしたが、昼に楽しいことはもうありません。日中は寝不足で頭をぼんやりさせて過ごすほうが楽でした。

 事務的な職員たちは、夜は優しいのです。鞭打ちながら私の性器を刺激して快楽をくれます。私は手や、両腿のあいだを使って恩返ししました。ローションを渡されて、ぬめらせてから……最初は戸惑ったりしましたが、すぐに慣れました。大人の射精を見るのはおもしろかったです。しかし、鞭を手渡されてしまうとどうしてもだめでした。恐れ多くて力が入らず、不満がらせてしまうのです。

 みんなから怖がられている体育会系な職員の一人が、礼拝堂では血が出るまで打たれたあと尻を犯してもらうのが好きとか、そんな秘密を知った私は児童たちに妙な優越感を覚えました。興奮した職員が鞭を捨てて、その職員の肛門に陰茎を捩じ込んだのを見たときは唖然としましたが。陰茎は女陰にのみ差し込むものだと当時の私は思っていたので。不安になりましたが、先生が私には入れないからと安心させてくれました。指で弄られるのは慣れて、好きになっていたのですが。

 で、ある真夏の夜でした。いつものように礼拝堂へ向かうと、熱気に包まれた宴を見物している紳士がいました。当時六十代の三屋清十郎さま、そう、旦那さまです。私は旦那さまをただの足長おじさんだと認識していたので、この方も鞭打ちを楽しむのかと驚きました。

 旦那さまは家に寄付をしたり、たまに訪問しては子供たちの様子を見にきたりしている方でした。なんでも、なんらかの企業の会長らしく、やる気のある児童は卒園したあと寮つきで雇って将来の世話をしてくださるとかで、高校生で頼るところのない人たちは必死に媚びを売っていたと思います」

 観客たちの一部が笑い声をあげた。

「……私含め小さな子たちは、将来なんか見えませんからね。無関心でした。先生と施設長が私を旦那さまの前へ連れていきます。先生は旦那さまに頭をさげて、施設長は――清十郎さん、この子が例の子です。私はたどたどしく、こんばんはと挨拶しました。旦那さまは優しく笑んで――こんばんは、君の話はよく聞いているよ。

 小首を傾げる私を、先生がさあ遊ぼうと引っ張っていきます。旦那さまと施設長はまざらず、私たちの様子を見ながらなにか話をしていました。先生は若干透ける黒地の、所々ピンクのリボンで飾られたベビードールを準備していて、私は裸になってからそれを着るとガータータイツを穿きました。長椅子に手をつきます。

 いつも通り尻から内股を打たれました。官能を生じさせられたところで、脚を開いて椅子に座り、先生が私の股間に顔を埋めます。施設長と旦那さまが見守るなか、私は口淫を受ける少女を演じました。旦那さまと目が合うと気恥ずかしさを感じつつも、吸茎の気持ちよさをすでに知っている私は先生の口の中に出してしまいました。先生が最後の一滴まで吸い尽くしながら、肛門をくすぐってくれます。

 それから私は打たれた痕がしみるのを我慢しながら、ローションで内股を十分に濡らしました。私は再び長椅子に手をつく格好になり、先生の小さな怒張を両腿で挟んで慰めます。先生は閉じた腿の隙間からすぐに陰茎を抜いて、私の尻に放ちました。ふと、先生の短くて早い陰茎なら受け入れてみてもいいかも知れないと思った瞬間、尻肉を掴まれました。先生の手ではありません。旦那さまの声が響きます――気持ちよさそうな穴だ、素晴らしい。

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