それから旦那さまは、度々宴を見にいらっしゃいました。カメラを持ってきて様子を収めたり、施設長とお話ししたりしていました。私は旦那さまに人見知りしていましたが、優しい方ですからそのうち親しみを持てるようになりました。鞭で達するところや、女の子になりきっての淫行を見せつづけていたら羞恥心も薄れます。

 そして、旦那さまは私を食事に誘ってくれました。明日……正確には今日という時間でしたが、お昼においしいものを食べさせてあげる、と。夏休み中でしたし、なにより家と学校の行事以外で出かけることは皆無に近かったので、私は喜んでうなずきました。

 宴のあと寝て起きた私に、職員たちが子供用のスーツを着せて髪まで整えてくれます。旦那さまはお金もちらしいから、なにかすごいところに連れていってもらえるのかと期待に胸を弾ませました。児童たちの不可解そうな視線を尻目に家を出て、迎えにきた立派な車に乗り込みます。わざわざ、運転手の方がドアを開けてくれました。

 シートには旦那さまと、見知らぬ少女が座っていました。疑問を感じた私に旦那さまは――うちの娘だよ、と一言で説明します。同伴者がいるなんて聞いていませんが、とくに不快にもならず少女の隣に腰をおろしました。少女は大変な美少女でした。

 たぶん、私と同じくらいの年でしょうか。色の白い肌は不健康そうに見えるほどで、整いすぎた顔立ちはどこか人工物めいています。さらさらの髪はボブに切りそろえ、真紅のドレスをまとい、サテンのロンググローブをはめていました。年齢にふさわしくない服装でしょうが、不思議と少女には似合っています。目的地につくまでのあいだに、私は何度も少女の横顔に目を遣ってしまいました。少女は視線に気がつくとこちらを向いて、にっこり微笑んでくれます。

 車は栄えた駅前にある、高層ホテルの駐車場にとまりました。車をおりてホテル内に入ると、白くつややかな石で造られたエントランスホールを私はついきょろきょろ見廻しながら、旦那さまと少女について歩き、エレベーターに乗りました。やや時間をかけて、最上階に到着するとウエイターが私たちを出迎えてレストランに通してくれます。

 広々とした店内に、私たち以外の客はいませんでした。一面に広がった窓からは街が一望できます。きっと夜なら、もっと美しい景観なのでしょう。テーブル席について、しばらくしてから前菜が運ばれてきます。フォークを掴み、私は子供ながら緊張してしまいました。

 それに気づいた旦那さまが――誰もいないから、別に気にしなくてもいい。と、不道徳なことを仰りました。旦那さまの隣に座っている少女はグローブをはめたまま、フォークで野菜をぐさぐさ刺して口に運んでいます。季節の野菜に添えられたキャビアを何粒か、テーブルクロスに落としていました。旦那さまもグレーのスーツと同色の、男性なら食事中は脱ぐのが礼儀である中折れ帽子をかぶったままだったと思います。

 私は旦那さま以下、少女以上の器用さで食事をしました。前菜のキャビアは、当時の私には珍味すぎましたがメインのステーキはとても美味でした。家の食事はやはり一般家庭レベルです。一生懸命ナイフを動かし、夢中で食べている私に旦那さまが色々と話題を振ってきました。家の生活や学校のことなど、私の日常のことを聞いてきます。

 私は正直に好きな子が亡くなってからつまらない、登下校をともにする相手もいない今、とくに学校が億劫であることを伝えました。少女が口元にソースをつけて――がっこうってなに? と言います。旦那さまが紙ナプキンを取って、それを拭ってあげながら――退屈なものだよ。私は少女より、旦那さまのほうに驚きました。大人がそんなことを言うなんて。

 ウエイターがからになった皿をさげます。デザートがくるのを待っているあいだのことでした。旦那さま――影次くん。君には二つ、デザートを用意してあるんだよ。少女が紅茶を、口をすすぐような動作をしながら飲んでいました。幼児のような行動を取る少女にいいかげん幻滅しつつ、私は旦那さまにお礼を言おうとしました。

 少女がグローブを外して突然テーブルの下に潜り込み、向かいにいる私のもとへやってきます。呆然としているとスラックスと下着が強引におろされ、股間に舌の感触がしました。……旦那さまが椅子を引くようにすすめます。その通りにすると、少女が私の陰茎を手で掴み、唇に先端を挟んでいるのがよく見えました。

 品に欠けている少女は、性技には長けていました。小さな舌で裏筋の辺りを刺激しながら、小さな口で扱きあげてくれます。女の子と初めての性的な接触。いつもの倒錯した快楽とは違う、正道な快楽です。最初は戸惑い、なかなか反応できません。しかししばらくすると私は内股を痙攣させて、思わず悲鳴に近い鳴き声をあげてしまいました。口の中に放つと、少女は飲みくだしてくれます。

 少女が最後までしぼりとろうと手を動かしながら、私の尿道口にキスをしているときにようやく気づきました。グローブで隠されていた少女の二の腕には、薔薇の形をした烙印がありました。そう、少女は楽園の奴隷だったのです。……少女が自分の席に戻ったところで、タイミングを計らったようにウエイターがデザートを持ってきました。私は下半身を露出させたまま余韻に浸っていたので、慌てて着衣を直しました。デザートは甘酸っぱい、木苺のソルベでした。

 食べおわり、ふいにトイレへ行きたくなって席を立った私に、旦那さまが大きいほうか小さいほうかたずねてきました。小なら、少女の口で用を足していいとのことです。さすがにそれには恐怖を感じ、遠慮しました。……ホテルを出て、帰りの車の中、うつらうつらとしている少女を旦那さまは肩に寄りかからせて――すまないね、君のほうが行儀がよかったくらいだ。この娘はつまらない世間とは無縁の育ち方をしているのでね。君が望むのなら次はもっとおとなしい娘を連れてこよう。ところで影次くん、大人の女性は好きかい? ……。

 帰宅して、そのあと出された味気ない夕食を私はほとんど残してしまいました。職員たちはなにも注意しません。

 そして、毎年恒例の小旅行の行事が近かったのですが当日、私は具合が悪そうだから休んでもいいと言われました。確かに寝不足ではありましたが、別に参加できないほどではありません。でも甘えて、昼まで惰眠しました。それから残っている職員と淫行に耽ります。いつも通り、女装して。小夜子には申し訳ないのですが、私はそのとき脳裏に奴隷の少女を描いていました。

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